HOME特集記事 > 栄養士さんご紹介 第9回 及川 真由子 先生(学校給食ごはん Vol.9 - 2015 夏号掲載)

栄養士さんご紹介第9回

北海道平取養護学校静内ペテカリの園分校 ・栄養教諭
及川 真由子 先生

給食は万能の教材、と実感しています。

自立をめざす、35の個性。

 札幌からクルマで2時間あまり、「静内ペテカリの園分校」に到着。早速『学校給食ごはん』9人目の栄養士さんである及川真由子先生に案内されると、体育館の方からにぎやかな歓声が聞こえてきます。4日後の運動会に向けた総練習の真っ最中でした。開会式から跳び箱、玉入れ競争、閉会式までフルメニューで、先生も児童生徒も本番さながらの真剣さです。

運動会の総練習。
小学部、中学部、高等部まで、皆一緒になって元気な歓声が飛び交う。

 北海道平取養護学校の分校であるこの学校では、小学部8名、中学部6名、高等部21名、6歳から18歳まで35名の子どもたちが共に学んでいます。個別の教育的支援を必要とする子など一人一人の状態や個性に合わせて教育をするために、ほぼ同じ数の先生に加え看護師などの専門職員が熱心に指導をしています。高等部の生徒が多い理由を石川玉乃校長先生に伺うと「高校生になると近隣に高等支援学校がないので、地元の中学から入学してくる生徒が多いのです。私たちは彼らの卒業後の自立を何よりめざしていますが、昨年度は初めて1名が一般企業に入社できました」とうれしそうに語ってくれました。

頑張った分だけ、給食がおいしい。
給食係がクラスメイトの名札がついたトレイに給食を盛付け、並べる。
友達それぞれの食べる量を想像しながら盛付ける。

 総練習が終わりお腹がすいたグッドタイミングで給食の時間です。 配膳ホールで給食当番が配膳準備を終えると、各教室から子どもたちが受け取りにくるルール。及川先生はその狙いを「こぼさないように気をつけること、友達の食べる量を調整する思いやりができること、教室から移動することで授業から給食へ、給食から授業への気持ちの切り替えがスムーズにできること」と語ります。本日の献立は「運動会頑張ろうメニュー」と称して、タラのトマミートソースがけをメインに海藻サラダ、コーンスープ、大きな丸パンと牛乳。

輪になっていただきます!
タラは高タンパク・低カロリーで練習で使った筋力の栄養補給に、地元静内産の大玉トマトは疲労回復にうってつけ。先生と児童が輪になって元気な声で「いただきまーす」私たちも早速「いただきまーす」うん、トマトの酸味が食欲をそそり、校長先生も感心するくらいおいしく、ボリュームも満点でした。

 給食後、及川先生にお話を聞きました。タラのトマミートソースがけは手間がかかっている給食でしたが、毎日こうなんですか?「はい。ここには13年目のベテラン調理員さんが二人いるんです。相談しながら毎月新作メニューを出していますが、それもお二人がいるからこそできるんです。人気メニューは、ラーメン。 “日高で一番のラーメン”と言ってくれた子がいます(笑)サバの味噌煮も人気があります。肉料理よりも魚料理のほうが残食が少ないです」

左/小学部で味噌汁の調理実習。食材を包丁で切って茹でて味付けまで全て子どもたちだけで行う。
右/学校菜園で自分たちで育て、収穫した給食の食材を調理員さんに手渡す。

楽しくなければ給食じゃない。
13年務めるベテランの調理員さんと。
毎月新作メニューを実現できるのは
二人の支えがあってこそ。

 「ペテカリの園分校」ならではの食育の取り組みはありますか?
 「食育というか、毎日どこかのクラスで児童生徒と給食を食べながらお話をしています。また1週間分の給食の写真を掲示板に貼り、子どもたちの料理に対する反応を記録しています」最近は給食カレンダーのイラストの代わりに子どもが描いた絵を使っているそうですが、その絵のセンスがなかなか見事! そのほか「準備から調理まで子どもたちだけで味噌汁をつくる練習(小学生)や、自分たちが学校菜園で育てた野菜を調理員さんに手渡し、料理された食材を給食で食べて実感させたり(中学生以上)、さらに中学部・高等部では家庭科や保健体育の先生と連携し、自立した生活を視野に入れた授業と調理実習を2・3学期に毎週行っています」

 栄養や食文化・マナーを学ぶだけではなく、将来自立するためのコミュニケーションや生きる力を育む教材として、給食を活用するということ?

美味しい給食を食べた後はおなか一杯、笑顔一杯の記念撮影
「特別支援学校だからということでなく、給食はどこの学校でも万能の教材だと思っています。体で学び、心で学びます。マナーや食文化はもちろん、会話や自己主張、自身と友達の関係性なども学ぶことができます。そして、給食はおいしくて楽しい、が私のモットー。楽しくないと勉強しても頭に残らないし、おいしくないと先生たちも指導に気持ちが乗らないと思うんです」

マイナスからのスタート。
PTA料理教室。メニューは保護者からのリクエストに応える。

 及川先生が栄養教諭になろうと思ったきっかけを教えてください。
「学生時代の小学校での実習がきっかけでした。それまでは病院の管理栄養士とか、ファイターズやコンサドーレ札幌の管理栄養士に憧れてスポーツ栄養の道を考えたことも。栄養教諭の試験に合格し、自分が特別支援学校に配属になるとは予想もしていませんでした。大学での特別支援教育の授業も1コマだけで、ほとんど予備知識がなかったですから」

高等部では自立を視野に、
栄養バランスのとれた食生活についての食育授業を行う。

 一番大変だったことは?
「一番は、1年目の高等部での授業です。教壇に立ったときに、何を教えるべきか根本から視点を変える必要があると感じました。ゼロどころかマイナスからのスタートでした。特別支援学校での栄養教諭の立ち位置や子どもたちとのコミュニケーション方法、食育とは何かなど試行錯誤の連続でした。現在5年目ですが、やっと一人一人の様子を観察し変化を見られるようになってきました。いまはこの学校でよかったと思えます。子どもたちの声がすぐ返ってくる、感動の度合いが違いますから」

給食カレンダーの、子どもが描いた絵が素晴らしい!

 では、一番うれしかったことは?
「卒業生が、給食で食べた料理で弁当を作りたい、と言ってレシピを聞きにきたことがあります。もう、最高の気分でしたね」

最後に、保護者の方々へのメッセージを。
 「こちらのお母さん方はとても気さくで、日常的にお話をしていて大変励まされています。給食試食会や毎月発行の給食便りのほかに、PTAお料理教室が情報交換の場としても好評で、もっと開いてほしいという声がうれしい悩みです。お母さん方へは、食事は家族みんなで食べてほしい、と伝えたいです。今日は学校で何をしたの、と子どもに尋ねてほしい。そんな会話の積み重ねがマナーとか家庭での食育につながると思います」

インタビュー・文/三浦清隆  写真撮影/寺沢写真スタジオ

 

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