HOME特集記事 > 栄養士さんご紹介 第10回 遠藤 美由紀 先生(学校給食ごはん Vol.10 - 2015 秋冬号掲載)

栄養士さんご紹介第10回

今回は養護教諭です»» 石狩市立聚富小学校 養護教諭
遠藤 美由紀 先生

学校では、子どもたちのお母さんでいたい。


雲海テラスの上に立つ学校。
風間敏明校長先生

 札幌市の中心部から車で約1時間、今回訪れたのは、創立116周年を迎えた石狩市立聚富(しっぷ、と読みます)小学校および創立66周年の中学校という小中併設校。現在小学生19名、中学生10名、それに特別支援学級の4名を含む児童生徒が学んでいます。学校は丘の上にあり、校長室の窓からは遥か彼方に札幌ドームの銀色の屋根が見えるほど見晴らしが素晴らしい。

 「すこし冷えると、この辺り一面は雲海テラスになります」と語るのは、風間敏明校長先生。「校舎の裏手は深い森で、そこからさまざまな動物がやって来ます。野生のアライグマが繁殖して学校菜園のトウモロコシがすべてやられたこともあります。リスや野うさぎはしょっちゅう来ますし、鹿やマムシ(!)がグランドを散歩していることもありますよ」どこか楽しげに語る校長先生は、今年4月にこちらに赴任したばかり。

一生懸命に調理したおいしいカレーを配膳。いっぱい食べてねと優しいひとコマです。

これまでの児童500名余りの学校運営とはずいぶん様子が違いますが、とまどいは? 「むしろ小さい学校は動きやすいし、一人一人の行動や表情によく目が届きます。自然の中で子どもたちは純朴ですし、掃除当番も縦割りにして高学年の子は低学年の子を助けたり教えたりしています。こうした良き伝統がこの学校では代々受け継がれてきているのです」

土に近い生活をさせたい。
食べきれないほど収穫したジャガイモは
みんなで分け合いました。

 菜園ではどんな野菜を育てていますか?

 「いまは夕顔、枝豆、小松菜などですね。近くに200坪の畑がありまして、教員住宅だった跡地をPTA副会長で農家の阿部保さんが整備してくださいました。今年はキュウリが400本も取れました。稲作農家の加藤孝さんの指導で米もつくっていまして、昨日は3、4年生が自分たちで田植えから育てた稲刈りをしました。収穫した野菜は全員が家に持ち帰ったり、学校でコロッケやピザをつくったり。そう、サツマイモも育てていて、冬にはたき火をして焼き芋をするつもりです」

 地域の農家の方との一体感も強いようですが、いわば毎日が食育?

 「食育というか、ここではつくって食べるのはイベントというより日常的にやっていることです。

ジャガイモの皮むきで遠藤先生が
やさしく手当してます。
私自身も農作業が大好きですし、最近は抗菌とか殺菌ブームの世の中だからこそ、子どもたちには土に近い生活をさせたいと思っています」と語る校長先生。

 と、そこへ遠藤美由紀先生が登場。お忙しそうですね?

 「はい。今日は収穫祭と称して、学校の畑で育てた野菜を使って子どもたちが給食をつくる日なのです。日頃お世話になっている農家の方もご招待します。献立は、絶対メニューのカレーライス! 食材は、地元石狩ブランドの望来(モウライ)豚と畑で収穫したジャガイモ、玉ねぎ、お米はななつぼしを使います」ちょっと家庭科教室をのぞいてみると、5、6年生が楽しそうにジャガイモを洗ったり、涙を流しながら玉ねぎを切ったりしていました。

ココロとカラダの先生。

 聚富小学校にはじつは栄養教諭はいません。養護教諭である遠藤先生が時にはその役目も担います。「私、“心と体の先生”を自負していますので(笑)養護教諭として生活習慣や性教育など主に保健に関わる話をしますが、当然食に関する話題も取り上げます。地産地消をめざす『石狩デー』には、当地の名産であるキクラゲについてその栄養価とか、スーパーに売っているキクラゲは大半が中国産であることとかお話をしました。今後は先生方の理解を得てもっと食育というか、“心と体のカリキュラム”ができたらいいなと願っています」

 遠藤先生のキャリアは長く、期限付きを含めるとこの学校で23校目にもなるといいます。最後は体育教師であるご主人と6年間厚岸にいて、こちらへ来て1年半。「800名ほどの学校もあり、一日に50人ほどの子どもが保健室を訪ねてきて部屋から出る間もないほどでした。ここでは子どもと向き合う時間が多いので思い入れも強くなります。卒業していく子に『ああ、ここまでできるようになったか』と親のような気持ちにもなります。いつも保健室から外へ出て子どもたちを見ていたい。学校では子どもたちのお母さんでいたいと思っています」

(写真左上)チョット気になってますが、ここは優しく見守ってます。/(右上)みんなに振舞う係りも5・6年生が担当です。
(左下)PTA副会長 阿部さんの挨拶です。/(右下)出来上がった今年の収穫祭「特製カレー」。

食はその子の未来を映します。

 いよいよ給食タイムというか、収穫祭が子どもたちの司会進行で始まりました。校長先生に続きゲストの阿部さんのご挨拶。ふたりのお子さんを通わせるPTA副会長の阿部さんは、ご自身もこの学校の卒業生。農家の4代目に当たり、初代阿部貞男さんは明治28年にイの一番にここに入植したといいます。その昔、伊達藩の屯田兵たちが風が強くて農作に向かないとあきらめた土地。『聚富村開村百周年記念誌』には、大木を伐り根っこを掘り起こす重労働、熊に家を揺さぶられること度々だった当時の様子が一家の写真とともに記されています。さて、カレーの出来は? 元気な「いただきま~す!」の声。うん、なかなかイケます。おかわりをする子(取材班も含め)が続出して、またたく間に甘口・中辛・辛口の3種類のカレーがきれいに空っぽになりました。これまで絶えることなく続いてきた、いわば地域の絆の味です。

(写真左)石狩デーで遠藤先生の食育授業です。/(右)マナー豆箸を使って、箸の使い方を楽しく体験させ伝えています。

 最後に、“お母さん”として遠藤先生がいま気になることを聞きました。

みんなで草取り、今年のジャガイモはおいしく育ちました。

 「先生方が気にするのは、やはり食事のマナー。箸の持ち方、食べながら話す子たち。それから朝食の質ですね、炭水化物がなかったり偏食する子も多いです。家では当たり前のことも、外へ出て恥ずかしい思いをして気づくこともある。食はその子の未来を映します。子どもを通して親に、あるいはPTA研修会で直接お母さんたちに伝えたいことです。そして、作物を育てて、食べて、自分自身が育っていく、という生命の連鎖を知ること。命を大事にする子を育てたいと思います」


インタビュー・文/三浦清隆  写真撮影/寺沢写真スタジオ

 

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